いざ会社を辞めたいと思ったときに、どうしても必要になるのが「退職に必要な手続き」

複雑なイメージがある・面倒くさい・恥ずかしいなどの様々な理由で、なかなか周りの人に聞きづらいことのひとつです。

何度も転職を経験している方なら、手続きもスムーズに行うことが出来ますが、最初は誰もが不安に悩まされるもの。

今回はそんな方のために、具体的な退職手続きの流れ・退職後にやるべきことを詳しく解説していきます。

退職前に必要な手続き

正社員はアルバイトとは違い、「辞めます」と言うだけで退職の手続きが終了するわけではありません。

退職時に必要な過程は大まかに以下の3つであることが一般的です。

  • 1.退職の意思を示す
  • 2.会社からの支給品を返却
  • 3.会社から必要な書類を受け取る

退職の意思を示す

「〇日に辞めたい」「いつまでに辞めたい」「〇月中に辞めたい」と思っても、まずは退職の意思を示さなければ、思ったとおりに退職することは出来ません。

円滑・円満に辞めるためには早めの行動を心がけることが大切です。

以下、退職までの流れを解説していきます。

退職の意思表示はいつ行えばよいのか

calendar

一般的には就業規則などのルールで1ヵ月前には退職の申し出を行うことが定められています。

しかし法令上、退職の意思を表明してから2週間後には辞めることが可能です。

(引用)当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。(民法627条1項)

わかりやすく説明するなら、期間の決まった雇用でない限り申し出から2週間で退職をすることが可能ということになります。

期間の決まった雇用とは、例えば派遣社員であったり、契約社員である場合が多いです。

もちろん法律が優先されますし、法的に辞める側が不利になることはありえませんが、上司や会社とのトラブルが発生してしまうことも少なくないため、円滑・円満に辞めるためには就業規則を守ることを推奨します。

他にも、引継ぎや退職手続きを行う時間を考えると、辞めたい日付から逆算して1~3ヵ月前には退職の意思を伝えるのがベターだと言えるでしょう。

直属の上司に伝える

男性と女性

退職することを伝える際、突然退職届を突き出すのではなく、まずは直属の上司に辞めたい旨を伝えます。

忙しくない時間を見て、「少しお時間よろしいでしょうか?」と聞くとよいでしょう。

上司に退職の意志を伝える際には、落ち着いた口調で話すよう心がけましょう。

引き止めに流されてしまい、せっかく伝えた退職の意志がなあなあになってしまう可能性を防げます。

退職交渉を行う

「この日に確実に辞めたい」と思っても、具体的な退職日は退職交渉の中で決めることになります。

その際、退職手続きや、仕事の引継ぎ、残りの有給消化などをあらかじめ計算して交渉すると、スムーズに話を進めることができます。

退職届を提出する

法令上、退職届の提出の必要はありません。

しかし、退職するという意思を明文化して証拠として残しておく効力があり、会社側も管理がしやすくなりますので、出すほうがメリットが大きいです。

退職願や辞表を出したらいけないの?

退職願・退職届・辞表の役割は違います。

以下、表で解説していきます。

退職願 退職願とは、労働契約の解除を会社に願い出るためのものです。
つまり、退職の意思を会社に伝えるためのもので、これは必ずしも書面である必要はありません。
上司に退職したい旨を伝えている場合は、それが退職願になるので、書面として提出する必要はありません。
退職届 退職届とは、退職が確定したのちに会社に提出するための書類になります。
この記事では、「上司に退職の意思を伝えて既に辞めることが決まっている」ので、こちらを提出します。
辞表 辞表とは、社長や取締役などの雇用関係で縛られていない立場の人、つまり役員以上がその役職を辞すときに届け出るための書類になります。
そのため、辞表を出したあと社員に戻ることもあります。
正社員が退職するときに出すと失礼に当たりますので、絶対に出さないようにしましょう。

会社都合で辞める場合退職届は必要?

自己都合退職ではなく、会社都合の退職による場合は退職届の提出は必要ありません。

しかし、会社都合の退職でありながら、退職届の提出を求められた場合には、なぜ提出の必要があるのか必ず確認しましょう。

会社都合の退職なのに退職届を提出した場合、自己都合退職にされる恐れがあるので、失業保険をもらえるまで時間がかかったり、支給額が減る恐れがあります。

会社からの支給品を返却

会社から貸与されているものは全て返却します。

中には情報漏洩やセキュリティにリスクを伴う物品もありますので、全て返しましょう。

以下に会社に返却すべきものの例を紹介します。

社員証社員であることを証明する物品は全て返却します。
鍵・セキュリティカード返さないとオフィスのセキュリティ上の問題が生まれてしまうため、必ず返却します。
健康保険証扶養家族がいる場合も同時に返却します。
制服マナーとしてクリーニングして返却します。
名刺マナーとして自分の名刺と、仕事上で交換した相手の名刺も返却します。
通勤定期券会社によっては残りの定期の清算が必要だったりと対応が違うため、確認しましょう。
書類・マニュアル会社・主に仕事の引継ぎ相手に渡します。
備品社用PCやWiFi機器・マウスやケーブルなど、会社から貸与されたものや経費で購入したものは返却します。

会社から必要な書類を受け取る

離職票

退職後、転職した後の会社や公的機関から、提出を求められる可能性がある書類です。

必要な場合は受け取りましょう。

年金手帳会社が保管していた場合、受け取ります。
雇用保険被保険者証転職先に提出する必要があります。
会社が保管していた場合、返還してもらいましょう。
健康保険資格喪失証明書失業中に国民健康保険に加入する場合は必要になります。
発行まで数日から数週間かかることも。
退職証明書基本的には希望した場合発行されます。
家族の扶養に入る場合必要になります。
離職票基本的には希望した場合発行されます。
失業保険の申請に必要に必要な書類です。
基本的には退職からおおよそ10日以内に会社から送付されます。
源泉徴収票年内に転職する場合は、転職先の年末調整に必要になります。
基本的には退職からおおよそ1ヵ月以内に会社から送付されます。

退職後に必要な手続き

会社を退職した後、翌日に転職先に入社する場合と、しばらく期間を置く場合とで必要な手続きが変わってきます。

場合によって必要な手続きとそうでない手続きがあるので、そのどちらも紹介していきます。

健康保険の切り替え

退職日から1日でも空白期間が生まれてしまった場合は、自分で保険の手続きをする必要があります。

様々なケースが考えられるので、以下で詳しく紹介します。

在職中に加入していた健康保険を継続する場合

healthcare

退職後も在職中と同じ健康保険を継続できる制度で、任意継続被保険者制度といいます。

「在職中の給与の標準支給額が28万円を超えていた場合、国民健康保険より保険料が安くなる」「扶養家族がいる場合、一人分の保険料で全員分適用される」、等のメリットがありますが、条件があります。

条件資格喪失日までに被保険者である期間が継続して2ヵ月以上あること
申請までの期間退職後20日以内
加入期間最長2年
申請の場所会社または健康保険組合
必要なもの
  • 一月分の保険料
  • 住民票
  • 任意継続被保険者資格取得申出書
  • 印鑑

国民健康保険に比べて申請の遅れ・保険料の納入遅れに厳しく、少しでも遅れると強制的に脱退させられます。

国民健康保険に加入する場合

市区町村が保険者となる制度です。保険料は前年度の所得・資産・家族の人数によって定められます。

任意継続被保険者制度より条件は緩くなっていますが、場合によっては高額な保険料を払う必要が出てきます。

条件他の保険制度に加入していないこと
申請までの期間退職後14日以内
加入期間条件を満たす限りずっと
申請の場所各市役所等
必要なもの
  • 健康保険資格喪失証明書
  • 各市区町村で定められた申請書
  • 身分証明書
  • 印鑑

申請までの期間は、任意継続被保険者制度より短くなっていますが、実際には期間を過ぎても受け付けてもらえるようです。

家族の扶養に入る場合

家族の扶養に入る場合は社会保険料や健康保険料を払わなくてもよいというメリットがありますが、多く稼ぐことが出来ない等のデメリットがあります。

条件被保険者の収入が130万未満であること
扶養に入りたい被保険者の年収が、家族の配偶者の年収の1/2を超えないこと
申請までの期間できるだけ早く
加入期間年収130万を上回らない限り
申請の場所家族の勤務先
必要なもの
  • 健康保険被扶養者異動届
  • 源泉徴収票退職証明書または離職票のコピー
  • 被保険者と別姓の場合は世帯全員の源泉徴収票
  • 年金や失業保険を受給している場合は、受給金額がわかるもののコピー

年金の手続き

保険と同様、年金の場合も空白期間が1日でも空いた場合には、手続きをする必要があります。

在職中でない場合は、国民年金か、または配偶者の扶養に入る2つの選択があります。

ただし、20歳未満60歳以上の方は、年金制度への加入義務はありません。

国民年金に切り替える

年金手帳

会社を退職した場合、多くの場合は国民年金への切り替えになり、自分で年金を収める必要があります。

また、厚生年金・共済年金に加入していない家族の扶養に入る場合も国民年金になります。

条件他の年金制度に加入していない
申請までの期間退職後14日以内
加入期間条件を満たす限りずっと
申請の場所各市役所等
必要なもの
  • 年金手帳
  • 退職証明書または離職票のコピー
  • 印鑑

配偶者の扶養に入る

夫婦

こちらは、「厚生年金・共済年金に加入している配偶者」の扶養に入ることで加入出来る制度になります。

配偶者以外の家族の扶養では、国民年金を払う必要があります。

条件被保険者の収入が130万未満であること
申請までの期間できるだけ早く
加入期間年収130万を上回らない限り
申請の場所配偶者の勤務先
必要なもの
  • 国民年金第3号被保険者該当届
  • 源泉徴収票
  • 退職証明書または離職票のコピー
  • 被保険者と別姓の場合は世帯全員の源泉徴収票
  • 年金や失業保険を受給している場合は、受給金額がわかるもののコピー

健康保険と年金は手続きの場所が同じ場合が多いので、同時に済ませると円滑に進みます。

必要な場合は失業保険の手続きを

男性 公園

失業保険は誰でももらえるわけではなく、雇用保険を払っていた場合、一定の条件を満たせば貰える給付金のことになります。

しかし、就職できる能力があり、且つ、求職活動をしないといけません。

民間の転職エージェントなどを利用しても良いのですが、その場合はハローワークに求職活動をしていることを認められない場合があるので、確実性を求めるならハローワークで求職活動をしましょう。

また、ケガをして働くことが出来なかったり、次は専業主婦・主夫になるといった場合は給付の対象になりません。

転職先が決まっていなかった場合に利用するとよいでしょう。

条件自己都合退職:退職前2年以内に、1年以上雇用保険に加入している。
会社都合退職:退職前1年以内に、6ヶ月以上雇用保険に加入している。
申請での期間できるだけ早く
もらえる期間自己都合退職:90日から150日
会社都合退職:90日から180日
給付までの期間自己都合退職:申請から最低3ヵ月と7日
会社都合退職:申請から最低7日
申請の場所ハローワーク
必要なもの
  • 雇用保険被保険者証
  • 離職票1※
  • 離職票2※
  • 身分証明書
  • 印鑑
  • 写真二枚(直近3ヵ月以内の縦3cm×横2.5cm)
  • 本人名義の普通預金通帳

※離職票1・離職票2はどちらも会社から送付される。

自己都合退職でも会社都合退職と同じ扱いになることも?

会社都合退職に比べて、自己都合退職の方が条件が厳しく、給付までの期間が長くなっています。

しかし、自己都合退職であっても場合によっては「特定理由離職者」として会社都合退職と同じ給付条件になるケースがあります。

以下、特定理由離職者となる一例になります。

    • セクハラやパワハラを受けていた
    • 最初の条件に比べ著しく待遇が悪くなった
    • 残業が多すぎた(退職6ヶ月以内に、2ヵ月以上残業が80時間以上続く等)

上記のような、「完全に自己都合で辞めたわけではない」場合は、会社都合退職と同じ条件の給付を受けることが出来る場合があります。

この条件にあてはまっているかの判断はハローワークが行うので、失業保険を受ける際に問い合わせてみましょう。

住民税の手続き

税金

住民税は給与から天引きされ納める「特別徴収」と、自分が振り込んで納める「普通徴収」があります。

退職後1ヵ月以内に転職する場合は、転職先の給料から天引きされるので手続きの必要はありませんが、退職から1ヵ月以上先に就職する場合は納め方が変わってくるので、ご紹介します。

1~5月に転職する場合退職した職場の最後の給与から天引き
6~12月に転職する場合翌年の5月までの住民税を納入
一括か分割か選べる

退職日の翌日に入社する場合

男性

退職日の翌日に転職先に入社する場合は、失業保険・健康保険・住民税の手続きが必要ありません。

必要書類を転職先に提出するだけで、手続きは完了します。

転職先に提出するもの

    • 雇用保険被保険者証
    • 年金手帳
    • 源泉徴収票
    • 健康保険資格喪失証明書
    • 健康保険被扶養者移動届(扶養家族がいる場合のみ)

退職手続きを円滑に進めるための3つのポイント

ここまで、退職前から退職後までの手続きを紹介してきましたが、会社に返却するもの・会社からもらう書類など、必要なものが相当な数になります。

また、自分はそもそも退職自体出来る気がしない…といった場合も参考にしてみてください。

以下、三点のポイントをまとめました。

①スケジュール管理を行う

退職後のすべての手続きまでのスケジュールを先に立てておくと円滑に進めることが出来ます。

とくに、在職中に受けていた健康保険を任意継続する場合は期限を1日でも遅れると受け付けてくれません。

こういったケースを防ぐためにも、何をどのタイミングで行うか確認できるスケジュールを作っておくのがベターです。

②必要なものをきちんと確認する

会社に返却するもの・会社からもらう書類に加えて、希望しない場合はもらうことが出来ない書類もあるので、自分には何が必要なのかをしっかりと確認しておくとよいでしょう。

後でもらい忘れに気づいて、書類を提出することが出来なかった、等の事態を防ぐためにも行っておくとよいでしょう。

③コミュニケーション能力・忍耐は必要

男性

いざ退職しようと思っても、上司から「これ以上の会社はない」「今辞めてもいいことないよ」「お前のためにならない」といった言葉で引き止めにあうこともあるでしょう。

そもそも、上司が怖くて退職の話が切り出せないことも考えられます。

こうした場合は、流されない・迷わない姿勢を持ち、忍耐強く自分を保つことが重要です。

それでも、どうしても辞めることが出来ない場合は「退職代行サービス」の利用も検討してみましょう。

辞めたいのに辞めることが出来ない、もう会社に行きたくないといった場合に、あなたに代わって会社に退職の意思を伝えてくれるサービスを退職代行サービスといいます。

こちらの記事でも紹介しているので、退職を切り出せない場合は利用してみるのも一つの手です。

必要な手続きを理解して円滑に退職を進めよう

男性

以上、退職前から退職後までの手続きを紹介してきました。

退職後に必要な手続きの多くは自ら行う必要がありますし、その内容も多岐に渡ります。

また、必要な手続きを事前に知っておくことで、辞めてから戸惑うことも減りますよね。

この記事の情報をもとに、退職に必要な手続きを円滑に進められることを願っています。

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